2012年6月9日土曜日

チタン - Wikipedia


外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 チタン, Ti, 22
分類 遷移金属
族, 周期, ブロック 4, 4, d
原子量 47.867(1) g·mol-1
電子配置 [Ar] 4s2 3d2
電子殻 2, 8, 10, 2(画像)
物理特性
固体
密度 (室温付近) 4.506 g·cm-3
融点での液体密度 4.11 g·cm-3
融点 1941 K, 1668 °C, 3034 °F
沸点 3560 K, 3287 °C, 5949 °F
融解熱 14.15 kJ·mol-1
蒸発熱 425 kJ·mol-1
熱容量 (25 °C) 25.060 J·mol-1·K-1
蒸気圧
圧力(Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 1982 2171 (2403) 2692 3064 3558
原子特性
酸化数 4, 3, 2, 1[1]
(両性酸化物)
電気陰性度 1.54 (ポーリングの値)
イオン化エネルギー
(詳細)
第1: 658.8 kJ·mol-1
第2: 1309.8 kJ·mol-1
第3: 2652.5 kJ·mol-1
原子半径 147 pm
共有結合半径 160 ± 8 pm
その他
結晶構造 六方晶系
磁性 常磁性
電気抵抗率 (20 °C) 420 nΩ·m
熱伝導率 (300 K) 21.9 W·m-1·K-1
熱膨張率 (25 °C) 8.6 µm·m-1·K-1
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(r.t.) 5,090 m·s-1
ヤング率 116 GPa
剛性率 44 GPa
体積弾性率 110 GPa
ポアソン比 0.32
モース硬度 6.0
ビッカース硬度 970 MPa
ブリネル硬度 716 MPa
CAS登録番号 7440-32-6
最安定同位体
詳細はチタンの同位体を参照

チタン (英: titanium, 羅: titanium) は、原子番号22の元素。元素記号は Ti。チタン族元素の一つで、金属光沢を持つ遷移元素である。チタニウムと呼ばれることもある。


豚、電気ショックボルトはprod

地球を構成する地殻の成分として9番目に多い元素で、遷移元素としては鉄に次ぐ。普通に見られる造岩鉱物であるルチルやチタン鉄鉱といった鉱物の主成分である。自然界の存在は豊富であるが、集積度がさほど高くないことや製錬が難しいことから、金属として広く用いられる様になったのは比較的最近である。チタンの性質は化学的、物理的にジルコニウムに近い。酸化物である酸化チタン(IV)は非常に安定な化合物で、白色顔料として利用され、また光触媒としての性質を持つ。

チタンは酸化物が非常に安定で侵されにくく、空気中では表面が酸化物の皮膜によって保護されるため(不動態)、白金(プラチナ)や金とほぼ同等の強い耐蝕性を持つ。室温では酸や食塩水(海水)などに対し高い耐食性を示し、少量の湿気が存在する場合は塩素系ガスとも反応しない。そのため、純チタンではやや接着性に劣るが、逆に表面の汚れやごみなどの付着物を容易に取り除ける。しかし、高温ではさまざまな元素と反応しやすい金属であるため、鋳造や溶接には酸素や窒素を遮断する大掛かりな設備を必要とする。炭素や窒素とも反応してそれぞれ炭化物や窒化物を作り、これらは超硬合金の添加物としてしばしば利用される。

特に純度の高いチタンは無酸素空間においての塑性に優れ、鋼鉄と似た色合いの銀灰色光沢を持つ。チタンは鋼鉄以上の強度を持つ一方、質量は鋼鉄の約45 %と非常に軽い。チタンはアルミニウムと比較して、約60 %重いものの約2倍の強度を持つ。これらの特性により、チタンは他の金属よりも金属疲労が起こりにくい。

外観は銀灰色を呈する金属元素であり、比重は4.5。融点は1812 °C(1667 °C、1668 °Cの報告もあり)、沸点は3285 °C(3287 °Cの報告もあり)であり、遷移金属としては平均的な値である。常温常圧で安定な結晶として六方最密充填構造 (HCP) を持つが、880 °C以上で体心立方構造 (BCC) に転移する。純粋なものは耐食性が高く、展性、延性に富み、引張強度が大きい(硬くかつ粘り強い)。空気中では常温で酸化被膜を作り内部が保護される。フッ化水素酸には徐々に溶けフルオロ錯体 TiF62- を生成し、加熱下の塩酸に溶けて青紫色の3価のイオン Ti3+ を生成する。アルカリ水溶液とはほとんど反応しない。

150 °C以上でハロゲンと、700 °C以上で水素、酸素、窒素、炭素と反応する。安定な原子価は+3価または+4価である。また、磁石をわずかに引きつけられるほどの弱い常磁性や極めて低い電気伝導性、熱伝導性を持っている。

金属チタンは強度、軽さ、耐食性、耐熱性を備え、様々な分野で活用されている。しかし、金属チタンは製錬と加工が難しく費用がかかるため大量には使われていない。化合物では酸化チタン(IV)が安価な白色顔料として広く用いられ、日常でも接する機会が多い。


バラクーダコネクタ抗が低下

[編集] 金属素材

チタン、あるいはチタン合金の持つ、強度、軽さ、耐食性、耐熱性といった性質から、航空機、潜水艦、自転車やゴルフクラブ等の競技用機器、化学プラント、生体インプラント材料など多岐にわたって使用されるほか、鉄鋼合金との脱酸剤や、ステンレス鋼において炭素含有量を減少させる目的などにも使用される。加工性にはやや難がある。

金属チタン部品は高価になってしまうため、その用途は、耐食性、耐熱性、軽量化と強度のバランスを考慮した狭い領域に限られる。たとえば航空機用途において耐熱性と強度を優先すると、現在のチタン合金は1000 °Cを超える耐熱性を持たないのでガスタービンエンジンのホットセクションには使われない。金属チタンは500 °C以下の部分で Ni 耐熱超合金よりも軽量化できるジェットノズル等に使われる。その他の、より低温な機体構造には、より安価で軽量化できるアルミニウム合金が多用される。低温部でも鉄鋼よりも軽量化できることから降着装置に用いられた例がある。

1952年に生体親和性が非常に高く骨と結合(オッセオインテグレーション)する事が発見され、デンタルインプラントのフィクスチャー(インプラント体)としてほとんどの場合チタンを使用する。拒絶反応やアレルギーを防ぐためにグロー放電でクリーニングを行ったり純度の高いチタンが使用される。

[編集] 建材

チタンは酸化皮膜の屈折率の違いによる独特な干渉色や、その表面加工による意匠性の高さ、汚れの付きにくさや強い耐蝕性によるメンテナンスの容易さ等を活かし、建材としての利用も行われている。

[編集] 絵具

チタンの約95 %は酸化チタン(IV)として、主に白色の顔料として絵具や合成樹脂などに使用される。ちなみに、酸化チタン(IV)で作られた絵具は赤外線の反射率が高いため、屋外での絵画の描写に向いているほか、セメントなどにも使用されることもある。また、光触媒としての性質を持ち、光を吸収して有機物を分解する。この性質によって、光のあたる場所では有機物による汚れが分解される為に白さが長く保たれるが、逆に、有機系の色素や合成樹脂を分解してしまうためにこれらと混ぜて利用する事を難しくしている。

[編集]

酸化チタン(IV)は紙に織り込むという方法でも使用される。チタンを織り込むことで、白く丈夫で透けない良質の紙を作ることが可能となる。一方で、金属化合物であるため重くなる。広辞苑など、長期に亘って使用される分厚い書籍に利用されるようになっている。

[編集] その他

また、他にも以下の用途等に使用されている。


ベッドのレールと頭痛ラック
  • 海水への耐蝕性から、海水の淡水化プラントにおける熱交換器での利用。
  • 骨と結合する性質をもち、優れた機械的性質、生体組織との親和性の高さを兼ね備えることによる、デンタルインプラントや人工関節/人工骨といった整形外科分野での利用
  • イオン化しにくいために金属アレルギーを引き起こしにくく、ピアスなどの装身具の材料として利用される。
  • 健康器具を兼ねたネックレスなどのアクセサリーの材料として用いられることがある。
  • チタンジルコニウム合金の刃物として利用。この合金は軽量でさびにくく高強度である。
  • 形状記憶合金の材料としての利用。
  • ニオブなどとの合金による超伝導素材。
  • チタン酸バリウムあるいはチタン酸ストロンチウムは、その高誘電率により電子材料(積層セラミックコンデンサ)に用いられる。
  • チタン酸ストロンチウムは高屈折材料として人工宝石や光学材料に用いられる。
  • 塩化チタン(IV)はガラスの着色や、高湿度の空気中で発煙する性質を利用して煙幕や空中文字へ利用される。
  • 酸化チタン(IV)の皮膚を保護する性質から日焼け止め剤としての利用される。
  • 酸化チタン(IV)は光触媒作用により有機物を分解するため、トイレの表面に利用される。
  • オレフィン重合に係るチーグラー・ナッタ触媒としての利用。
  • 腕時計の腕に接する面。酸化しにくい特徴を生かしている。
  • チタン板をガスバーナーで熱するなど加工することによる、美術品の作成[2]

チタンはイギリスで1791年、聖職者のウィリアム・グレゴールによって発見された。彼は自分の教区内のメナカン谷で発見したので、メナカイト (menachite) と命名したが一般的には知れ渡らなかった。また、ほぼ同じ時期にはフランツ・ヨーゼフ・ミュラーによっても同様の物質が作られたが彼はそれをチタンであることを特定することができなかった。

1795年にはドイツのマルティン・ハインリヒ・クラプロートによって鉱石(ルチルかチタン鉄鉱のどちらかであるが、どちらかというのははっきりしていない)から独自に再発見され、ギリシア神話における地球最初の子であるティタンに因んで「チタン」と命名された。しかしこの頃はまだチタンを単体として分離する手法が存在しなかった。

チタンの発見から100年以上経た1910年、ニュージーランド出身でアメリカの化学者であるマシュー・A・ハンター[3]が、チタンを高純度 (99.9 %) で分離することに成功した。

1946年には、ルクセンブルクの工学者であるウィリアム・クロールがマグネシウムで還元する方法(クロール法。後述)を考え出し、さらに高純度のチタンを作り出すことに成功する。

1950年代から1960年代にかけての冷戦で、ソ連はアメリカ軍がチタンを使用することを防ぐための戦術として世界中のチタン市場を買い占めることを試みたが失敗した。

また、当時発見されていたチタン鉱脈はほとんど東側諸国であったため、アメリカはチタンをソビエト連邦から調達していた。現在では何の障壁もなく行えるが、冷戦時には不可能だったため、アメリカはニセの会社を設立し、そこを通じてアメリカへ密輸入していた[4]


[編集] チタンの生産

自然界には純粋なチタンの単体は殆ど存在せず、化合物として主に鉱石の中に含まれる。地殻の中に約0.6 %存在し、火成岩やそこから得られた沈澱物の中に多く含まれ、地球上に広く分布している。チタンの鉱石鉱物には、チタン鉄鉱(イルメナイト、FeTiO3)やルチル(金紅石、TiO2)、板チタン石(TiO2)、灰チタン石(ペロブスカイト、CaTiO3)およびくさび石(チタナイト、CaTiSiO5)などが存在するが、特にチタン鉄鉱とルチルが経済的に重要な役割を持っている。チタンの主な採掘は、オーストラリア大陸やスカンディナヴィア半島、北アメリカ大陸などであり、1997年におけるチタンの世界のシェアは以下の順になっている。

アポロ17号が月面に到着した際に持ち出された岩石から12.1 %の TiO2 が検出されたほか、隕石の中からも検出されており、太陽やM型の恒星にも存在すると考えられている。

[編集] クロール法

チタン鉄鉱やルチルなどの、鉄分を含む鉱石からチタンを精錬する方法は、まず炭素と熱して鉄を除いた後、さらに炭素と熱しながら塩素を通じて塩化チタン(IV) TiCl4(沸点136 °C)とし、蒸留して精製する。

TiO2 + 2C + 2Cl2 → TiCl4 + 2CO

チタンは高温で炭化物や窒化物を作りやすいので、アルゴン中約900 °Cにおいてマグネシウムで還元した後、塩化マグネシウムを真空分離して多孔質の金属チタンを得る。

TiCl4 + 2Mg → Ti + 2MgCl2

こうして得られたチタンは多孔質であるため、スポンジチタンと呼ばれる。通常はこの状態で出荷される。途中、真空分離された塩化マグネシウムは再び塩素とマグネシウムに分離され、再利用される。これをクロール法と呼ぶ。チタンの製造は、プロセスが複雑で鉄鋼のように連続生産ができないため、製鉄よりも費用がかかり高価になる。

[編集] チタンの化合物

化合物中の原子価は+4価が最も安定であり、+2価および+3価のものも存在するが酸化されやすい。

チタンは5つの安定同位体を持つが、その中でも 48Ti が最も多く地球上に存在し、不安定同位体を含めたチタンの同位体は、39.99から57.966までの質量範囲(原子質量単位)を持つ。


[編集] チタン世界会議

[編集] 出典・注釈

[編集] 関連項目

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